知識労働者の帰属意識は専門領域にある
一九五〇年代、六〇年代のアメリカでは、パーティで会った人に何をしているかを聞けば、「GEで働いている」「シティバンクにいる」など、雇用主たる組織の名前で返ってきた。当時のアメリカは、今日の日本と同じだった。イギリス、フランス、ドイツその他あらゆる先進国が同じだった。ところが今日、アメリカでは、「治金学者です」「税務をやっている」「ソフトウェアの設計です」と答えが返ってくる。少なくともアメリカでは、知識労働者は、もはや自らのアイデンティティを雇用主たる組織に求めなくなっており、専門領域への帰属意識をますます強めている。今日では日本においてさえ、若い人たちが同じ傾向にある。
『プロフェッショナルの条件』 〜はじめに P.viii、ix〜