グリーンスパンの妙技

つまり十分に準備を重ね、相手の心をつかみ、相手の意見を尊重することだ。アラン・グリーンスパンはこの点にかけて卓越した才を兼ね備えていた。グリーンスパンは質問に答える際には、たとえ少々的はずれな質問であっても、まずそれに敬意を表する。そして「地球が平らであるとは、面白いお考えですな」などとコメントするのだ。それから「ご質問を言い換えさせていただいてもよろしいでしょうか」と言いながら、全く違う質問をみずからに問い、相手を煙に巻くような絶妙なニュアンスで答えるので、質問者はもっともらしい顔でうなづくか、よくわからないと認めるしかなくなるのである。
そのあと、グリーンスパンは「ご質問の答えになっているでしょうか」と尋ねる。
すると議員は決まって「はい」と答えるのだった。
『ルービン回顧録』 〜第七章 P.249〜