市場と民主主義の違い

企業なら「企業の利益」、つまり企業の将来的なフリーキャッシュフローの割引価値を合法的に増やすという単純かつ一貫した定義ができる。社員全員が企業の利益に関心があるわけでもないし、企業の利益に真っ向から背反する行動をとる役員もいる。しかし、大事なのは明確な基準が存在しているという事実だ。特にレベルが高いわけでも、道徳的にもどうこう言うような基準でもないかもしれないが、戦略の善し悪しや成否を判断する基準が存在しているということには変わりがない。
民主主義に関してみんなに受け入れられる基準を確立するのは難しい。それは人々が利己的だからとか、公益に反する振る舞いをするからではない。・・・<中略>そうではなくて、経済学者ヨーゼフ・シュンペーターの言葉を借りれば、「個人や集団によって公益の定義は当然異なる」からだ。
「みんなの意見」は案外正しい』 〜第12章 P.279〜