自身の市場価値への自身

「ここは正念場だ。何としても斉藤さんには、折れないように頑張ってもらわなければ・・・」
冨山和彦を筆頭にした幹部たちはこう決意し、「究極の組織防衛策」に出る腹をくくった。
「辞表を預かっていただけますか」
冨山は辞表を書いて、斉藤に委ねた。他の多くの幹部も、これに続いた。
「原理原則を歪めて不良債権の塩漬け期間になるぐらいだったら、潔く再生機構から身を引いたほうがいい」
こんな強烈な覚悟が、彼らの間で共有されていった。
再生機構の幹部たちは、みな一流の再生ビジネスのプロばかりだ。再生機構を辞しても、好条件の再就職先は引く手あまただった。下手な「サラリーマン根性」を出して、歪んだ運営の組織に恋々とする必要などなかった。それどころか、再生機構の市場での評価が下がれば、その運営に携わった自身の市場価値に傷つけかねなかったのだ。
『企業復活』 〜第2章 あの「死に体企業」を復活させろ! P.152〜