人間を見る眼がついてくると怒鳴らなくなる

天狗は世のため人のためによかれと思って事を進め、それは確かに成果をあげるのだが、当時のエリート官僚に認められなかった。・・・<中略>
困難な外交交渉を遂行するために、日本国家が天狗の力を必要とする状況は今後も生じるであろう。そして、天狗の善意が再び国策捜査によって報いられることもあろう。これについては「運河悪かった」と言って諦めるしかない。それでも誰かが国益のために天狗の機能を果たさなくてはならないのである。少なくとも私はそう考えている。過去の天狗が自らの失敗について記録を残しておけば、未来の天狗はそれを参考にして、少なくとも同じ轍は踏まないであろう。これが私が回顧録を執筆するに至った主な動機である。
国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』 〜第六章 獄中から保釈、そして裁判闘争へ P.375〜