彼を知り己を知ればの前提となる「五者」

彼を知り己を知れば、百戦して殆からず。彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆し。
この末尾の文の冒頭「彼を知り己を知れば」は余りにも有名だが、その前提の「勝を知る」の「五者」を踏まえた文章であることを忘れてはなるまい。その五者とは、(一)双方の優劣を比較して戦えるか戦えないかを知ること、(二)兵力が多いか少ないかで運用が違うことを知ること、(三)上下が一心同体で同じことを欲していること、(四)前もって先々のことを考え、考えていない相手のすきを待つこと、(五)将軍が有能で君主が余計なことに介入しないこと、いわば統一的な指揮権が確立していること。
『「孫子」の読み方』 〜謀攻篇 P.72〜