固定観念にしばられるのを避けるために若い人を意識して見る

私は今31歳で、年下の人と対戦する機会が増えてきました。そこで思うのは、後輩の将棋をしっかりみなければいけないということです。例えば、四段五段の人や、まだプロになっていない人と指した時に、その人の手がわからないことが時々あるんです。どういう意図で指した言ってなのか分からない。対局が終わって、あれこれ考えたりしていると、あっ、こういう方針だったのかと気づくわけです。
できるだけ情報を集め、最新の型も研究しているつもりですが、それでもこういうことがある。恐らく私の中にも固定観念が形作られているのでしょう。プロの将棋界は百数十人の世界ですが、いつも対戦する相手は10人程度。同じようなメンバーの中で指し続けているうちに、その中である種の暗黙の了解のようなものが出来上がる。これはきれいな手であり、これは筋が悪いといった仲間内の共通認識が形成されていく。
このままでは変化に対応できなくなってしまう。それだけは避けたいですから、若い人たちの将棋は極力意識して見るようにしています。
シリコンバレーから将棋を観る』 〜第一章 羽生義治と「変わりゆく現代将棋」 P.33、34〜