「知のオープン化」と「勝つこと」をいかに両立させるかがインターネット時代の思想の本質

「知のオープン化」と「勝つこと」をいかに両立させるか。それこそが、インターネット時代の思想の本質のひとつである。羽生はインターネット時代の思想を、その時代が到来するよりも早い時期から、『羽生の頭脳』のオープン化と七冠制覇の両立という形で有限実行していたのだ。『羽生の頭脳』が書き始められた一九九二年には、インターネット時代は到来しておらず、「情報技術(IT革命)」はまだ始まっていなかった。「情報技術(IT)革命」が到来する前に、その上に乗るべき内容はどうあるべきかについて、「知のオープン化」という「情報(I)革命」の思想を、羽生は『羽生の頭脳』に凝縮した形で表現していたのだ。
シリコンバレーから将棋を観る』 〜第一章 羽生義治と「変わりゆく現代将棋」 P.41〜