無駄なようでも創造性を生もうとする営みを続ける以外、長期的には生き残るすべはない

羽生が最後に言う「創造性以外のものは簡単に手に入る時代」とは、産業の世界の「何もかもがコモディティ化していく時代にどう生き残るか」という議論そのものである。
厳しいながら、権利のない世界のほうが進歩が加速する。だから、進歩を最優先事項とするなら、情報の共有は避けられない。そういう新しい世界では、「効率だけで考えたら、創造なんてやってられない」から、一見モノマネをして安直に生きるほうが正しいかのようにも見える。「状況への対応力」で生き抜くのが理にかなっているようにも見える。しかし、無駄なようでも創造性を生もうとする営みを続ける以外、長期的には生き残るすべはない。突き詰めていけば「最後は想像力の勝負になる」のだと、羽生は考えるのである。
シリコンバレーから将棋を観る』 〜第一章 羽生義治と「変わりゆく現代将棋」 P.46〜