仕事を受ける際は、予め条件などつけず、要求すべきことが生じたらそのとき要求すればいい

「閣下は台湾総督をお受けするに当たって、どういう条件をつけたんですか」
児玉は座り直して言った。
「条件は何もつけない。ただお受けした。予め条件をつけるなどということは私は好まない。赴任してみて要求すべきことが生じたらそのとき要求すればいい、そう思っている。
新平は、つまらぬことを聞いたと思って自分を恥じた。
児玉は、新平が(このひとにはかなわない)と感じる人間の一人だ。
『小説 後藤新平』 〜台湾に新天地 P.83〜