落とした人が気づかないような物を拾い集め、それがこの世に存在した印を残すために小説を書く

作家という役割の人間は最後尾を歩いている。先を歩いている人たちが、人知れずおとしていったもの、こぼれ落ちたもの、そんなものを拾い集めて、落とした本人さえ、そんなものを自分が持っていたと気づいていないような落とし物を拾い集めて、でもそれが確かにこの世に存在したんだという印を残すために小説の形にしている
『物語の役割』 〜第ニ部 物語が生まれる現場 P.75〜