書評

落とした人が気づかないような物を拾い集め、それがこの世に存在した印を残すために小説を書く

作家という役割の人間は最後尾を歩いている。先を歩いている人たちが、人知れずおとしていったもの、こぼれ落ちたもの、そんなものを拾い集めて、落とした本人さえ、そんなものを自分が持っていたと気づいていないような落とし物を拾い集めて、でもそれが確…

既にある物語をキャッチするのが作家の役割

ストーリーは自然に発生してくるもので、むしろ自分が書こうとしている、まだ書かれていない物語が、すでにストーリーを持っているわけです。ストーリーは作家が考えるものではなくて、実はすでにあって、それを逃さないようにキャッチするのが作家の役目で…

言葉にされない物語を見つけ、掘り起こし、それに言葉を与える

作家も現実のなかにすでにあるけれども、言葉にされないためにきづかれないでいる物語を見つけ出し、鉱石を掘り起こすようにスコップで一所懸命掘り出して、それに言葉を与えるのです。 自分が考えついたわけではなく、実はすでにそこにあったのだ、というよ…

物語の持っている力に導かれ、作家は一番後ろから追いかける

「こっちへいこう。こういうふうに世界を広げてゆこう」という、物語自身が持っている力に導かれないと小説は書けないと思います。一人の作家の頭のなかで考えることのできる程度はたかだか知れていますので、作家が先頭に立って登場人物たちをぐいぐい引っ…

字数への意識が、ブログ書評全般に欠けている

自由に書いていいけど、ひとつだけルールを設けようと。「分量制限を課すことが大事だよ」と言っています。四〇〇字なり八〇〇字なりに収めることを目標にすると、ぐっとちがってくる。この字数への意識が、ブログ書評全般に欠けているのかもしれません。 『…

簡にして要を得た紹介と面白い読解で作品という大八車を後ろから押してやるのが書評

わたしの考える書評は作品という第八車を後ろから押してやる”応援”の機能をはたすべきものです。自分が心の底から素晴らしいと思った本を、簡にして要を得た紹介と面白い読解によって、その本の存在をいまだ知らない読者へ手渡すことに書評の意味と意義があ…

書きたい要素を詰め込みすぎはX、文章や紹介の仕方にも芸があり、その本を読みたくなる書評は○

C=書評になっていない。その理由としては、?文章表現が稚拙もしくは言葉足らず、説明不足で何を言いたいのかわかりにくい、?どういう理由があるのかわからないけれど、対象書籍から逃げ腰になっている、?あれこれ書きたい要素を詰め込みすぎて、ひとつひと…

プロの書評には、物語のパターン認識、他の本の要素との関連づけなど「背景」がある

プロの書評には「背景」があるということです。本を読むたびに蓄積してきた知識や語彙や物語のパターン認識、個々の本が持っているさまざまな要素を他の本の要素と関連づけ、いわばほんの星座のようなものと作り上げる力、それがあるかないかが、書評と感想…

文章に心を配れる人が、書き出しの文章に心を配らないことはありえない

最初のページを読めばよい。最初の部分で次に読ませようとする力が文章になければ、それ以後、文章にそんな力が生まれることはない。文章に心を配れる人が、書き出しの文章に心を配らないことはありえない。言葉ひとつひとつの選択、配置、意味を考え抜いて…

物語には弱った心を支える力や現実に吹き消された希望の灯りをともし直す力を培う役目がある

未曾有の悲劇のただなかで、小説が一体何の役に立つのか、そんな無力感に包まれている作家もいるでしょう。小説なんかよりも、今ここにある危機を乗り越えるための具体的なハウツーやオピニオンを備えた本こそが必要だ。そう考える人もいるでしょう。でも、…