ハーバードでルービンが学んだこと

デモス教授は証明可能な確実性があるというプラントラの哲学者を尊敬していたが、私たちに教えたのは、人の意見や解釈はつねに改訂され、さらに発展するという見解だった。教授はプラントなど哲学者の思想を取り上げて、いかなる命題でも最終的あるいは究極的な意味で真実だと証明することは不可能である、と説き明かしていった。私たちには、分析の論理を理解するだけでなく、その体系が仮説、前提、所見に拠っている点を探し出すことが求められた。
・・・<中略>デモス教授に学んだアプローチを私はよく次のように要約する。「証明可能な絶対的なものはない」。・・・<中略>あとになって思えば、主張や命題を額面どおり受け取らないこと、見聞したことは逐一、探求と懐疑の精神に従って評価することこそ、大学で得た最も重要な収穫だったと言える。しかしデモス教授が種をまき、ハーバードが育てた成果は、懐疑主義にとどまらなかった。絶対的な意味で何も証明できないという概念いったん自分の心に取り込むと、人生をそれだけますます確率、選択、バランスで考えるようになる。証明可能な真実がない世界で、後に残る蓋然性をいっそう精密にするためには、より多くの知識と理解を身につけるしかない
『ルービン回顧録』 〜第二章 P.84〜