業界発展への協力と安易な企業間の妥協の違い

電通は自分だけ良ければよい、など決して考えておらぬ。どうしたら日本の広告界を良くすることができるか、どうしたらお互い業者の社会的経済的地位を高めることが出来るかということを常に考え実行している」
そこで吉田は戦時中の企業整理、広告料金の設定、手数料の改定、戦後の商業放送の創設など、次々に業績を紹介した。いずれも吉田が全力で戦って創りあげたものばかりだ。
「これで日本の広告界が良くなればお互い業者も良くなるのだ。その良くなった広告界というベースの上に立って、お互いが正しい競争、正しい努力をしてこそお互いは更によくなっていくのであって、私のお願いする協力とはこの種の活動に対する協力を意味するのであり、正しい競争や努力を否定する容易な妥協を言うのではない。電通は一年三百六十五日、毎朝八時から毎晩八時まで働いています」と説明、戦前からの広告代理業十二社は「さすがに」の声をあげた。
『「われ広告の鬼とならん』 〜第五章 大衆を撃つ P.311〜