人間を動機づけているものの本質を理解する努力を行うが第一歩

そんな人間の価値観、行動様式そのものを変えるのが真の経営者だ、という人もいるかもしれない。世の中には「自分は人間を根っこのところからかえることができる」という人もいる。しかし私自身は、それほどの超人的な力を持っていないし、逆に、世にカリスマと呼ばれる経営者たちと退治して、その人たちによって自分の人間性の根本を変えられてしまいそうだと感じだこともない。・・・<中略>
むしろ実態は、そこにいる個々人が本来持っていた個性ややる気に対して的確に働きかけた結果、モチベーションと組織能力が飛躍的に高まった、あるいは組織の中核を構成する人材をかなり大幅に入れ替えた結果、従来とは異なる価値感や行動様式が優勢になった、というようなことではないのか。経営者としての私のスタンスは、まずは人間を動機づけているものの本質を理解する努力を行う。そしてそこに的確に働きかけ、勇気づける。本人が相互に矛盾するインセンティヴの相克に苦しんでいるのなら、それを整理して、あるいは自分自身がその一部を引き受けて、その人を葛藤状態から解放すべくベストをつくすことである。
『会社は頭から腐る』 〜第1章 人はインセンティヴと性格の奴隷である P.28,29〜