日本は文明を興すことを諦め、その受益者となろうとしている

文明は大陸の多民族国家でおこるものだから、孤島に住む日本人は、それをみずから興すことを半ば諦めている。むしろ、受益者になろうとしてきた。ただし、みずからを失うまでに受容したことは一度もなかった。たとえば日本はかつて中国文明から受益した。唐代ー奈良朝時代では詩文と仏教を学び、宋代ー鎌倉期では朱子学と禅をふくむ思想をまなんだ。その多くは書物を通じての接触で、中国そのものになったり、追随したりしたことは一度もない。元、明、清の中国については、日本は中国文明はすでに衰弱したものとみて、関心を薄らがせたアメリカに対しても、一見追随にみえるかもしれないが、この態度を文明への固有の尊敬心として解釈してもらえまいか
〜『アメリカ素描』 〜第二部 P.275、276〜