日本人論

明治から導入された独創主義に毒され、連歌の文化を先端的な技術分野に活かせなかった

わたしたちが自問自答しなければならないことは、日本人は連歌を文化の遺伝子として持ちながら、その方法を先端的な技術分野に引用する点で、先駆的な役割を果たせなかったことである。その最大の理由は、再創主義という古くからある創作の手法を忘れて、明…

俳諧の「付け」という発想技術は、産業において外国のものを日本にうまく取り入れることに通じている

「付け」はおそらく世界に類をみないような豊かな発想技術である。思えば日本が外国のものを取り入れて日本化する方法も、「付け」の発想である。外国の事物の付心、付所を見極めて、それを和風に「転じ」てきたのである。俳諧で熟成された「付け」という修…

社会が押しつけずとも協調を重んじ、自己を押し出すことは日本人はしない

この二つのケースとも、その行為は社会が押しつけたものではなく、自尊心のしからしめる所だった。二人にとっては自分に対する誇りの問題だった。最も純粋な形の個人主義の表現である。 日本にもこの意味の個人主義者はたくさんいる。彼らは他の人たちと何ら…

一つの教義を絶対的真理として信じるように強制されることはなかった

日本では、一つの教義を絶対的真理として信じるように強制されることはなかったから、違った信仰を持つことは命に関わる危険なことではなかった。日本には反駁の精神を煽りたてたり、燃え上がらせたりする一神教は存在しなかった。また世俗の世界でも、古い…

鎖国下、狭い国土の中の過剰供給が品質と評判に対する高度な日本人の意識を育んだ

商人たちは最も大切な資金と顧客を宝物のように扱った。顧客の信用こそが第一だった。狭い閉鎖された社会では悪い評判がたつような不誠実な行いをすることはできなかった。たとえそれで大金を一度は設けることができても、評判がくずれるということは、人生…

日本ほど、貧富・階層の差が極端でない国、民族はない

日本には革命がなかった。なぜか、という問いにはたくさんの答えが可能であるが、結局日本ほど、貧富の差、上層と階層の差が極端でない国は、世界のどこの国、どこの民族にもないということである。 『驕れる白人と闘うための日本近代史』 〜第二章 劣等民族…

限られて資源の中で平和に暮らした鎖国時代の日本人の知恵は、二十一世紀の地球全体にとっても、大いに重要である

第一点 鎖国時代に作り上げられた日本社会の仕組みをよく知っていれば、日本が開国後、迅速かつ徹底的に近代化を実現できたことは全く驚くに足りないことだ。 第二点 鎖国時代の日本社会を正確に考察すれば、今日の日本を理解することができること。というの…

階級感覚が薄い社会であるため、日本には「現場力の重視」という思想が強い

日本は世界の中でもひときわユニークな文化伝統を持った社会である。 たとえば、閉鎖的な島国の中で暮らしてきたことで生まれた「損して得取れ」という信頼第一の思想、あるいは階級感覚が薄い社会であるがゆえに培われてきた「現場力の重視」の思想など、日…

日本人は外国から輸入し、付加価値を加え、日本的なものにする天才的な才能がある

日本ほど外国からあらゆることを吸収して独自な文化を維持している国は他にない。もちろん、その文化は絶えず変化して進化している。文化、アイデンティティは、時代によって変わっていく多様なものなのだ。・・・ 日本社会の美しさ、強さの一つに、一五〇〇…

日本人は日本の特異性を語るのが大好き

日本でアイデンティティ論が盛んなのは、主に三つの理由からだと思う。一つは、日本人論のように日本の特異性を論じるのが大好きな国民であるということだ。多くの日本人が思うほど日本はユニークな国ではない。政治制度にしても経済システムにしても、西欧…

日本人がアイデンティティを気にするのは奇異

日本人がアイデンティティを気にするのは、外国人から見ると奇異に感じる。アメリカ人がアイデンティティを考えるのは理解できる。世界の隅々から違った宗教を持って、いろんな人種が集まってアメリカという国を構成しているため、アイデンティティが混乱す…

違う国の人間の行動が意外であるとき、その行動を文化で説明するのは危険

これは笑い話だが、とても重要な教訓がここに潜んでいる。違う国の人間の行動が意外であるとき、その行動を文化で説明する危険性のことだ。「日本人はどうしてそういうことをするのか?」と聞かれて、「それは日本の文化だからだ」と言うのは説明にならない…

日本は文明を興すことを諦め、その受益者となろうとしている

文明は大陸の多民族国家でおこるものだから、孤島に住む日本人は、それをみずから興すことを半ば諦めている。むしろ、受益者になろうとしてきた。ただし、みずからを失うまでに受容したことは一度もなかった。たとえば日本はかつて中国文明から受益した。唐…

日本は品質管理という文明を自分自身の文化に適応させてしまった

品質管理に関するかぎり、アメリカが、いかにも"文明"主義的性格(普遍性を偏好する性格)の国らしく開発したこのことが、戦争がおわると、法や監督による規制をすてた。つまり、企業ごとの"自由"にまかされた。日本は在来の文化にそれに適応する遺伝体質があ…

「暗黙の合意」ができれば、粛々と一定方向に動くのが日本人の取り柄

こうした「暗黙の合意」ができれば、粛々と一定方向に動くのが日本人の取り柄である。時間はかかるが、日本の基幹産業の国際競争力の回復のために、「脱・鎖国」へとづづんでいくことだろう。 『パラダイス鎖国』 〜第4章 日本人と「パラダイス鎖国」 P.175〜

正直でさえあればいますぐにでも神は宿る

もし心が正直で正しくあれば、たとえ神を崇拝しなくても神はわれわれを守るであろう。ことわざにもあるとおり、神は正直な人間の頭に宿る。正直でさえあればいますぐにでも神は宿るのだ、と。道真の歌と同じことを言っていたのです。すなわち、自分自身の内…

日本の宗教は神は外部に存在せず、「自らの心に宿る」

宗教と近代科学は衝突します。それが、彼らの大きな悩みであり、ときには自然法則の中には必ず神の意思が宿っているはず、と考え熱心に科学研究にも取り組んできました。それが西欧近代の発展の原動力となったのです。また、その信仰心が「神との契約を守ら…

神道と仏教が日本に道徳力を保存した

日本の国民性のうちに、利己的な個人主義が比較的少ないことは、この国の救いであり、それがまた、国民をして優勢国に対しての自国の独立をよく保つことを得せしめたのである。このことに対して、日本は、自国の道徳力を創造し保存した、二つの大きな宗教に…

約束を守る、誠実であることは日本人の「こころ」の美学

日本人であれば、契約は守らなければならない、条約は守らなければならない、時間に正確でなければならない、仕事は誠実に行わなければならない、さらには、苦しいことがあっても法律やルールはなるべく守って耐え抜かなければならない、嘘をついて「心の潔…

有史以来一度も外国の支配を受けたことのない「地球上唯一の国」

予想を超えた惨めな敗戦と外国軍隊による占領支配という未曾有の経験が、日本人の心を根底から崩してしまったことが挙げられるでしょう。これは、考えてみれば、やむをえない側面もあるのです。何しろ、それまで日本という国は、有史以来一度も外国の支配を…

日本人の精神を突き崩さないと再びアメリカの脅威となる

とくに、末期の神風特攻隊と沖縄決戦、硫黄島決戦は、アメリカ人に甚大なショックを与えました。それらの戦場で日本兵や日本人が示した脅威の自己犠牲精神、アメリカはこれを一番恐れたわけです。それまで二〇世紀の初頭から数十年にわたって日本を敵視しつ…