日本人は日本の特異性を語るのが大好き

日本でアイデンティティ論が盛んなのは、主に三つの理由からだと思う。一つは、日本人論のように日本の特異性を論じるのが大好きな国民であるということだ。多くの日本人が思うほど日本はユニークな国ではない。政治制度にしても経済システムにしても、西欧と似ている点が多い。アメリカと比べると日本は確かにユニークに見えるが、実はいろんな意味で日本よりもユニークなのはアメリカのほうである。
昔から、「アメリカの例外性」(アメリカン・エクセプショナリズム)が学者の間で論じられているが、一般のアメリカ人、またアメリカの政治指導者たちは、アメリカの特異性を意識するより、アメリカの価値観は普遍的なものであるという思いが強い。逆に日本人は、他の国や文化との共通性をあまり意識しない。日本人がユニークなのは、強いて言えば、ユニークであると思いこんでいる点にある。
『政治と秋刀魚』 〜第四章 P.174〜