鎖国下、狭い国土の中の過剰供給が品質と評判に対する高度な日本人の意識を育んだ

商人たちは最も大切な資金と顧客を宝物のように扱った。顧客の信用こそが第一だった。狭い閉鎖された社会では悪い評判がたつような不誠実な行いをすることはできなかった。たとえそれで大金を一度は設けることができても、評判がくずれるということは、人生が崩れることだった。他の場所に移って働くことは空間的にも社会的にも難しい。働く場所はどこもいっぱいだった。・・・<中略>
数十年ほど前まではまだ全盛をきわめていた欧米諸国の工業部門を奈落の底に落とした日本人のこの能力は、いったい何に由来するのか。その答えは、四百年前に始まっていたのである。日本が統一した経済圏としてまとまり、その後、鎖国という条件の中で、品質に対する高度な意識と商人的能力とを発展させた四百年前に始まっていたのである。
『驕れる白人と闘うための日本近代史』 〜第四章  P.86〜