超人的な自発的努力・能力がなくとも目的を達成するのが兵法

孫子』は、部下に対して、超人的な自発的努力や能力の発揮、さらに度はずれた勤勉さえ要求していないし、そんなことはあてにもしていないのである。いわば部下が全部"新人類"であっても、必ず目的を達しうるのが兵法だと言っているような気がした。・・・<中略>
敵が来たら兵隊は逃げる。生物である以上、本能的に生を欲するのはあたりまえのことだ。敵が来なくても食料がなくなれば、兵隊は食料のある方へ逃亡してしまう。人間にとって食が不可欠な以上、それは当然のことだ。こういったさまざまな当然のことを当然とし、この当然のことは味方にとっても敵にとっても当然のことだ、ということをさらに前提にして全てを考えている。
『「孫子」の読み方』 〜はじめに P.4〜