著者は印刷出版システムを構成する要素の一部分に過ぎない

このように、著者の産みの親は、印刷出版システムである。著者を「主体を持った個」という近代文学的な視点にとらわれすぎると、多くのことを見失うであろう。著者は、出版社や印刷業者、流通業者、書籍販売業、読者、メディアテクノロジー、流通システムといった、印刷出版システムを構成する要素の一部分に過ぎないのだ。
十六世紀では、著者への報酬は非常に低く、利潤のほとんどは印刷出版業者のものとなった。著者という要素を作り出して、著作物を商品に変えるシステムの構築に不断の努力をしたのは、印刷出版業者であったからである。
『日本文化の模倣と創造』 〜著作権の狂想曲 P.90、91〜