失敗に学ぶことと、リカバリーのスピード、これが何より大切

このように、九八年の原宿店オープンに漕ぎつける前は失敗の連続だった。いずれにせよ、新しい事業は、そもそも失敗することが多いのである。やってみないと分からないことが多いからだ。事業計画をきちっと作っても、ほとんどそのとおりに進まないことのほうが多い。しかし、この失敗を生かすも殺すも経営姿勢次第である。失敗は誰にとっても嫌なものだ。目の前につきつけられる結果から目を逸らし、あるいは蓋をして葬り去りたい気持ちにもなるだろう。しかし、蓋をしたら最後、必ず同じ種類の失敗を繰り返すことになる。失敗は単なる傷ではない。失敗には次につながる成功の芽が潜んでいるものだ。したがって、実行しながら考えて、修正していけばよい。危機につながるような致命的な失敗は絶対にしてはならないが、実行して失敗するのは、実行もせず、分析ばかりしてグズグズしているよりよほどよい。失敗の経験は身につく学習効果として財産になる。
問題は、失敗と判断したときに「すぐに撤退」できるかどうかだ。儲からないと判断したら、その事業を継続すべきでないのは誰にでも理解できるはず。撤退もスピードが大事である。短期間のうちに撤退後の方針を決め、人員の再配置を決める。だらだらしていたらその分、損が膨らんでいくばかりだ。失敗に学ぶことと、リカバリーのスピード。これが何より大切である。
『一勝九敗』 〜挑戦と試行錯誤 P.83、84〜