人間の群れが生き続けるために必要な「公共」の「経綸」という発光体を持つ後藤新平

近代化の命題に沿って「より多く、より速く、より効率的に人やモノ、資本、情報を流通させる」には都市を大改造し、幅広い道路、鉄道を通し、広場を設け、街を開く必要がある。そうすれば都市の価値はさらに高まり、国が栄える、と新平は発想し、台湾や満州で都市建設を手がけた。
そして関東大震災で壊滅的打撃をこうむった東京を、都市事業の集大成「帝都復興」でパリにも劣らぬ近代都市に変貌させようとする・・・。
「朝敵」と蔑まれたところから成り上がる後藤新平の人生が華麗な輝きを放つのは、人間の群れが生き続けるために必要な「公共(パブリック、コモン)」の「経綸(国家の統治策)」という発光体を持っていたからだ。それは、権力者が民衆に忠誠を強いる滅私奉公の公ではなく、為政者自身が「私」を捨て、大衆とともに生きようとする思考の基盤であった。その志向性が、新平を、帝国主義列強がひしめく大海原に船出した近代国家にほんの進路を測る「羅針盤」に押し上げたのである。
後藤新平 日本の羅針盤となった男』 〜プロローグ P.11,12〜