大きな金を動かし、高い効果を期す

のちに「大風呂敷」と陰口を叩かれる新平の予算感覚は、天与のものだった。私的な借財も含めて「大きな金を動かし、高い効果を期す」新平のコスト意識は、本人の派手好みの一面があったにしろ、突きつめれば「金は天下のまわりもの」ととらえるおおらかさと無縁ではなかろう。金を墓場に持っていけないことを医師、新平は患者の死で実感している。蓄財に興味がない新平にとって、金銭は何かを実現するための手段であり、生きる目的にはならなかった。
後藤新平 日本の羅針盤となった男』 〜第2章 疫病との戦い P.92〜