ナポレオンのフーシェに対する好意と嫌悪、承認と拒否、恐怖と内心の尊敬が交差している

「卿が従来の行状を改めらるることは余の望み得ざることである、いかんとなれば、すでに数年以前より余がいかに不満を明示するも、卿においてはなんら改めらるることなき故である。卿は自己の意図の純正なるを確信さるるがゆえに、人は善をなさんとの意図をもってかえって多くの禍をかもすことありと言うも、卿は耳をかさないであろう。卿の才能と忠誠を余のために尽くすべき機会の一日もすみやかに来らんことを切望するもである。」この手紙はまるで秘密の鍵かなにかのようにナポレオンのフーシェに対する一番内密な関係をさらけ出してくれる。どの文章ひとつを取って見ても好意と嫌悪、承認と拒否、恐怖と内心の尊敬が交差している。
『ジョゼフ・フーシェ』 〜第六章 皇帝に対する闘争 P.232〜