2010-08-17から1日間の記事一覧
そうだ、あの男こそもってこいの人物だ、いつでも、また何にでも使える男ならあの男にかぎる、それでは大急ぎであの男を奈落の底から引き上げろ!総裁政府でも統領政府でも帝政でも王政でも、いったん政府が苦境に立って、適当な仲介者、調停者、整理者がい…
「卿が従来の行状を改めらるることは余の望み得ざることである、いかんとなれば、すでに数年以前より余がいかに不満を明示するも、卿においてはなんら改めらるることなき故である。卿は自己の意図の純正なるを確信さるるがゆえに、人は善をなさんとの意図を…
フーシェはナポレオンのもつ巨大な危険な悪魔的な力をよく知っている。ここ数十年のうちには、このような臣事するに値する傑出した天才は、ふたたび世にあらわれないだろうということはわかっているのである。またナポレオンにしても、自分の意中を電光石火…
彼のお手製のこの楽器をフーシェが演奏する時は、堂に入った芸術家の腕前を示した。権力というものは、ひそかに味わい、小出しに使うものだという、権力の最高の秘訣を彼は心得ている。 『ジョゼフ・フーシェ』 〜第四章 総裁政府と統領政府の大臣 P.142〜
輝かしい栄誉も人気というあやしげな幸福も、よろこんで彼は他人にくれてやる。情勢を達観し、人々を左右し、表面上の世界の指導者を実際においてあやつり、自分のからだは賭けないで、あらゆる博打のなかでも最高度の興奮を与えてくれる恐ろしい政治の博打…
この泰然自若たる冷血性はまたフーシェ特有の力なのだ。神経質に気にかかるというようなことは絶対になく、感覚の欲望にとらわれるということもない。情熱という情熱は、その額の厚い壁の背後に鬱積しては、散ってゆく。自分の実力は遊ばせておいて、その間…