2006-01-28から1日間の記事一覧

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村田蔵六という人間

しかしひらきなおって考えれば、ある仕事にとりつかれた人間というのは、ナマ身の哀歓など結果からみれば無きにひとしく、つまり自分自身を機能化して自分がどこかへ失せ、その死後痕跡としてやっと残るのは仕事ばかりということが多い。その仕事というのも…

村田蔵六と目的主義

「薩人の海江田武次だけは、気をつけられてほうがよろしい」 という注意をあたえた。しかし蔵六は「それはどういう意味か」ともきかず、ただだまっていた。時代の道具として存在しているこの男は、道具がそうであるようにつねに目的主義であり、その間の日常…

技術と思想はセット

ただ蔵六は、軍事技術者として民衆のエネルギーを欲した。それ以外に幕府をたおす戦力をつくりあげることができない。 蔵六は、単に技術者にすぎない。それも西洋式の軍事技術者であった。技術は技術そのものとして単独に存在することはない。技術にはかなら…

政治家に必要なもの

政治家というものは、蔵六のように洋学に深くなくても、物事についての知識や情報をあつめてその本質を洞察するという能力が必要・・・『花神』 〜中巻 P.290〜

将帥は寡黙でなければならない

「将帥は寡黙でなければならない。いちいち物事におどろいたり口やかましく感想を囀っているようなことでは、配下はそのことにふりまわされて方途に迷う」『花神』 〜中巻 P.155〜

精神の躍動は驚きから生まれる

田舎者のとりえは、外界に出てきたとき見るもののすべてが驚きであるということであった。精神の躍動というのは、おどろきからうまれるものであろう。 福沢という、この文明に対して稀代の感受性をもった人間は、横浜で仰天することによって、横浜というほん…

事実は何か?が重要

原理というものを優先して実在を軽視すればよき智恵も曇る。原理にあわぬからといって実在を攻撃することはいけない。『花神』 〜上巻 P.356〜

1138433527[Tips]技術とは目的を達成するための計算

船が、うごいている。海が背後に押しやられ、へさきに白波が湧いている。平素沈鬱なばかりの家老松根図書までが子供のようなはしゃぎ声をあげ、 「村田、進んでいるではないか」 と、ふりかえって叫んだ。が、蔵六の悪いくせが出た。 「進むのは、あたりまえ…

花神

花神(中) (新潮文庫)作者: 司馬遼太郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1976/09/01メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 9回この商品を含むブログ (39件) を見る