価値観によって統率されるゆるやかな階層制
したがって、ゆるやかな階層制を機能させるためには、プロジェクトを遂行するのに必要な人々の価値観―それがどんなものであれ―に訴える必要がある。・・・<中略>意思決定を委譲し、人々の価値観を保証することにより、ゆるやかな階層制は、伝統的企業よりもはるかに大きな集団から、莫大な創造性とエネルギーを引きだすことができる。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜ゆるやかな階層制〜 P.68、69
Wikipedia参加者を束ねる価値観
多くの参加者にとって主な魅力は、おそらく事典を作ることそれ自体の知的快感と、改良のために与えられた大いなる自由と、そして、大きな目的に向かって協力しあうことの満足感なのだろう。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜ゆるやかな階層制〜 P.73
厳しい管理によるMotivationの低下
もしも、強固な階層制のもとに、きびしく管理されていたならば、成功に欠かせない創造性あふれる人々を惹きつけることはできないだろう。そしておそらく、MITの管理者が研究や教育を管理しようとすれば、仕事の質は上がるのではなく、下がるはずだ。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜ゆるやかな階層制〜 P.75
産業革命時の組織設計
・・・<中略>、産業革命時は、農場から出てきて工場で働く労働者は信頼できないし、賢い決定も下せないし、訓練する必要があり、するべきことを指示しなければ働かないことを前提にして、組織が設計されてたという。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜ゆるやかな階層制〜 P.76
組織における情報の開放について
「われわれの情報が開放され過ぎていると心配する者もいる。競争相手に漏れるだろうと言うのだ。だが、それを冒す価値のあるリスクだと考えている。そうでなければ、どうやって社員がビジネスパーソンになれるのだ?正しい意思決定をするためには情報が必要なのだから」
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜ゆるやかな階層制〜 P.79
分散化に適さない人、望まない人の存在
意思決定をおこなうことになる人間の準備も必要だ。自分が評価される基準を理解しなければならないし、正しい情報を手に入れなければならない。そのための訓練を受ける必要があるかもしれない。中には、別の仕事を見つけなくてはならない者も出てくるだろう。なぜなら、誰もが正しい意思決定をする能力を持っているわけではないし、たとえ能力があってもそれを望まない者もいるからだ。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜ゆるやかな階層制〜 P.85
チーム編成時の費用低減
ここでもまた、情報伝達テクノロジーにより、ひとつのプロジェクトのために人を探して、選別し、働かせ、報酬を払うことに要する費用が減り、臨時のチームを組織するのを簡単にしているのだ。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜組織外のマーケット〜 P.111
イーベイのビジネスモデル
同社は店員を大量に雇うことで、わずか八年間で驚くべき規模に成長したわけではない。通常の小売会社で店員(そして、買い手、商品担当、マーケティング担当、荷送り人)のすることを、イーベイでは売り手がおこなっているのである。つまり、実質的には、数十万人のフリーランスの小売商人として働けるようなインフラを提供しているのだ。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜組織外のマーケット〜 P.117
現場担当者によるForecast
一日わずか数分で数日間を費やすだけの販売部員たちの予測が、販売予測を専門とするHP本社の販売部にいるアナリストよりも正確なのはなぜだろう?簡単に言えば、本部の立案者は各地にいる販売部員が集団として持っている情報をすべて持っているわけではないからだ。・・・<中略>、一方マーケットではすべての販売部員がほんとうに起こると思うことにもとづいて取引をするように動機付けられている。起きてほしいと彼らが思うことでも、また、他人がこう考えていてほしいと、彼らが望むことでもない。さらに重要なのは、取引参加者が自分たちの現在の相違を見られることだ。そのため、彼らは自分たちの持っている情報(その勘さえも)をすべて動員して、株価が適当かどうかを判断できるのである。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜組織内のマーケット〜 P.140
情報伝達コストの低減に伴いマーケットの威力が向上
どの選択もそれぞれ複雑さを持つ。まちがったことを外部に委託すれば、サプライヤーに対する重要な戦略的優位性を失うことになるかもしれない。また、外部委託が少なすぎれば、それまでのみずからの能力に縛られて、早く動けないで、ライバルについていけなくなる。そして、企業内部にマーケットを持ち込んだときは、新たなインフラを整備し、従業員に新たなスキルを与え、リスクとコントロールのための新たな経営態度をもつことが必要になる。
しかしながら、これらのさまざまなマーケットは、人間を組織の中心に据えるもっとも有望な方法である。そして、マーケットを有効に機能させるために必要となる広範なコミュニケーションは、つねに向上し、その費用は下がりつづけているのだ。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜組織内のマーケット〜 P.156
『調整』と『育成』
調整とは、自分がコントロールしている、いないにかかわらず、よい結果が出せるように仕事を進めることである。調整は集中化によりおこなわれるものも、分散化によりおこなわれるものもある。どちらの場合でも、調整はするべき業務とそれらの関係に焦点を合わせる。それに対して、育成はその業務をおこなう人間に焦点を置いている。彼らが何を求め、何が得意で、お互いにどうやって助け合えるのかを考えるのだ。育成とは、人を使うときに管理と放任を正しく組み合わせて、もっともよい結果をもたらすことである。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜活動の調整〜 P.181
調整に必要なこと
おおまかに言うと、調整とは望ましい結果を出せるように業務を組み立てることだ。具体的には、人々の集団によい結果を生みださせる鍵となる三つの重要な条件−能力、インセンティブ、結びつき−を確立することである。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜活動の調整〜 P.182
『リーダーシップ』
ドワイト・アイゼンハワー大統領はかつて、リーダーシップを「自分がしてもらいたいことを、他人をしてすすんでそれをする気にさせる能力だ」と定義した。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜人材の育成〜 P.216
『ビジョン』
しかし、よいビジョンはたんなる響きのいい言葉の羅列ではない。それは、あなたが心から達成したいと思っている成果の確固たるイメージなのだ。・・・<中略>あなたがほんとうに関心があるものと結びついていないビジョンは、言葉のかたまりにすぎない。・・・<中略>そして、ほとんどのビジョンは、あなたにとって個人的に重要なだけでなく、かなりの自由を持っている他人を巻き込む必要がある。そうした場合、よいビジョンはあなたの価値感や望みを他人に押しつけるのではなく、他人の要求や価値観にも共鳴して、その人をビジョンの達成にかかわらせるものなのだ。…<中略>すなわち、よいビジョンは、あなたの望むことを他人に命ずるための手段ではなく、他人もまたそれを望むように彼らを育成する手段なのである。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜人材の育成〜 P.226〜227
あいまいをとらえる
たとえわかりにくく、あいまいであっても、目下の現実を理解しなければならない。…<中略>実際のところ、他人よりも早く、たくさんのあいまいなデータを読み解き、傾向をつかむことが、あなたが成功するためのもっとも重要な要素となりうるのだ。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜人材の育成〜 P.227
ブレインストーミング
例えば、ブレインストーミングは、一九三〇年代にアレックス・オズボーンが開発した創造性を生むテクニックである。そこには四つのルールがあり、それらは次のように言い換えることができる。ひとつ、アイデアを考えているあいだは、批判や評価、判定はいっさい認めない。ふたつ、「バカげている」から言わないでおくアイデアはない。三つ、アイデアは質より量が大切である。四つ、他人のアイデアに便乗することは奨励される。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜人材の育成〜 P.229〜230
分散化された組織のもたらすもの
一方、二十一世紀の分散化された組織は前任者とは違って、大きいことと小さいこととの両方の利点を享受できる。個人に大いなる柔軟性と自由を与えると同時に、歴史上かつてないほどの規模で世界中の人と活動を統合できるのだ。この方向に働く経済とテクノロジーの力はとても強力であり、この結果を確実に起こりうるものにしている。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜エピローグ〜 P.255
分散化
ここでは「分散化」を、「問題にかかわる者を意思決定に参加させること」と定義する。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜選択の時〜 P.24
意思決定の場所を決める要素
だが、ビジネスにおける意思決定がなされる場所を決める要素はもうひとつあり、それはほとんどいたるところで劇的に変化しているのである。<中略>・・・この要素とは何だろうか?
それは、<情報伝達コスト>である。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜選択の時〜 P.27
分散化の促進
・・・<中略>、情報伝達コストが低下しつづけることは、分散化の機会がますます増えることを意味する。情報伝達の経済性と意思決定における根本的変化は、これからの長い年月、経済や、企業という企業、産業という産業に影響を与えつづけるのである。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜選択の時〜 P.31
分散的意思決定に要するコスト
単純に、そうした大きな集団において高度に分散化された意思決定をするには、コストがかかりすぎるのである。情報を伝えるのに直接会って話す手段しかないときに、大人数で平等主義にもとづく意思決定をするのは時間がかかりすぎる。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜驚くべきパターン〜 P.44
集中化の弊害
またもうひとつの―漠然とはしているが―集中化された組織が払う代償は、個人の自主性の喪失である。狩猟採集民の群れから階層制農耕社会への移行は、リーダーを除いたすべての人に、自分たちの自由の一部を―ときにはそのほとんどを―犠牲にすることを求めたのだ。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜驚くべきパターン〜 P.55
情報伝達コスト低減が可能にすること
私たちの祖先が突然に方向転換をして、分散化を選んだ理由は何か、という疑問への答えは次のとおりである。印刷機などの新しいテクノロジーによって、情報伝達コストが充分に下がり、人々がほしいと思うふたつのものの双方を手離さずにすむようになったからだ。
人々は大組織の経済的、軍事的優位性を享受しながら、同時に遠い昔に手離した自由と柔軟性のいくらかを取り戻した。そして、これから見ていくが、同様の可能性が今、ビジネスの世界にも開かれているのである。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜驚くべきパターン〜 P.49
集中化によって失われること
私たちの遠い祖先が、みずからの自由のいくらかをあきらめる代わりに、大きいことによって得られる政治面での利益を選んだように、私たちの祖父母の多くが、ビジネス面で同様の選択をおこなった。彼らはやはり自由と、自営農業やささやかな商売の気楽さを手放し、流れ作業や会社のオフィスを選んで、空前の繁栄と、きびしくなった管理を得たのである。十九世紀と二十世紀の新しい情報伝達テクノロジーは、この選択を可能にし、今日の私たちは、彼らがほかの選択肢をもっていたことなど想像もできないほどだ。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜ビジネスでの驚くべきパターン〜 P.54
知識労働者に大事なこと
ITはたえず情報伝達コストを下げ、企業にとってスケールメリットを犠牲にせずに分散化することを可能にする。そして、知識労働の重要性が増したために、モチベーションや創造性や柔軟性はこれまでよりさらに重要になっているのだ。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜ビジネスでの驚くべきパターン〜 P.63
オープンソースという組織体
リナックスの物語は、オープンソース・ソフトウェアと呼ばれ、誰にでも自由に利用したり変更したりできるソフトウェアの例としてよく知られている。だが、それが知識労働を高度に分散化した、新しい形の組織の例だということはあまり知られていない。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜ゆるやかな階層制〜 P.67