作家という役割の人間は最後尾を歩いている。先を歩いている人たちが、人知れずおとしていったもの、こぼれ落ちたもの、そんなものを拾い集めて、落とした本人さえ、そんなものを自分が持っていたと気づいていないような落とし物を拾い集めて、でもそれが確…
ストーリーは自然に発生してくるもので、むしろ自分が書こうとしている、まだ書かれていない物語が、すでにストーリーを持っているわけです。ストーリーは作家が考えるものではなくて、実はすでにあって、それを逃さないようにキャッチするのが作家の役目で…
作家も現実のなかにすでにあるけれども、言葉にされないためにきづかれないでいる物語を見つけ出し、鉱石を掘り起こすようにスコップで一所懸命掘り出して、それに言葉を与えるのです。 自分が考えついたわけではなく、実はすでにそこにあったのだ、というよ…
「こっちへいこう。こういうふうに世界を広げてゆこう」という、物語自身が持っている力に導かれないと小説は書けないと思います。一人の作家の頭のなかで考えることのできる程度はたかだか知れていますので、作家が先頭に立って登場人物たちをぐいぐい引っ…
ソ連型市民社会はいつになっても成立しないと思う。それは、自らの代表を公共圏に送り出して、統治しようという発想がロシア人に希薄だからだ。統治は上からくるもので、それにどう対応するかという受動的政治文化がロシア人の骨の髄まで浸透している。 『蘇…
神話が必要だと思う。ロシア人を束ねていく神話だ。ロシア人は"ここにある"という存在概念ではなく、"成っていく"という生成概念でとらえるべきと思う。 『蘇る怪物 甦る怪物(リヴィアタン)』 〜2 アフガニスタン帰還兵アルベルト P.101〜
自由に書いていいけど、ひとつだけルールを設けようと。「分量制限を課すことが大事だよ」と言っています。四〇〇字なり八〇〇字なりに収めることを目標にすると、ぐっとちがってくる。この字数への意識が、ブログ書評全般に欠けているのかもしれません。 『…
わたしの考える書評は作品という第八車を後ろから押してやる”応援”の機能をはたすべきものです。自分が心の底から素晴らしいと思った本を、簡にして要を得た紹介と面白い読解によって、その本の存在をいまだ知らない読者へ手渡すことに書評の意味と意義があ…
C=書評になっていない。その理由としては、?文章表現が稚拙もしくは言葉足らず、説明不足で何を言いたいのかわかりにくい、?どういう理由があるのかわからないけれど、対象書籍から逃げ腰になっている、?あれこれ書きたい要素を詰め込みすぎて、ひとつひと…
プロの書評には「背景」があるということです。本を読むたびに蓄積してきた知識や語彙や物語のパターン認識、個々の本が持っているさまざまな要素を他の本の要素と関連づけ、いわばほんの星座のようなものと作り上げる力、それがあるかないかが、書評と感想…
最初のページを読めばよい。最初の部分で次に読ませようとする力が文章になければ、それ以後、文章にそんな力が生まれることはない。文章に心を配れる人が、書き出しの文章に心を配らないことはありえない。言葉ひとつひとつの選択、配置、意味を考え抜いて…
未曾有の悲劇のただなかで、小説が一体何の役に立つのか、そんな無力感に包まれている作家もいるでしょう。小説なんかよりも、今ここにある危機を乗り越えるための具体的なハウツーやオピニオンを備えた本こそが必要だ。そう考える人もいるでしょう。でも、…
「現場の情報がきちんと自分のところに伝わってこない。だから自ら福島第一原発を視察し、原発の所長などから直に話を聞いて、今後の対策に役立てようと思った」 菅直人首相はこう述べているのだが、情報とは命じて集まるものではなく、リーダーの力量で磁石…
ロンドンの伝統あるクラブで、老戦略家とランチを共にしていた折、彼がふと漏らした言葉をいまも鮮明に覚えている。 「眼前の懸案を手を携えて解決する力を内に秘めていない同盟はやがて衰退していく」 太平洋を挟む東京・ワシントン同盟は、半世紀を越えて…
国家の舵取りを委ねられたリーダーたるものは、インテリジェンス機関に情報を要求する際、決して最終的な決断の落としどころを悟られてはならないー。永く諜報界に語り継がれてきた箴言である。もし国家のリーダーが最終的な胸の内を悟られてしまえば、イン…
アメリカのホワイトハウスは、世界に並ぶものなき権力の館である。志高き者も、野望を滾らせた者も、無私の者も、利益をむさぼろうとする者も、すべてを飲み込む巨大の器なのだ。それゆえアメリカ大統領に求められる資質は、単なる行政手腕などではない。自…
下村によれば、経済成長は「実質的な生産能力の拡充が、それに対応した総需要の膨張によって、現実の国民総生産として実現される過程である」と定義される。 『危機の宰相』 〜第十章 邪教から国教へ P.224〜
将たる者は人に好かれるだけでは足りない。人を好きなる能力が必要なのだ。 『危機の宰相』 〜第四章 敗者としての池田勇人 P.92〜
基本戦略は、Dデー作戦に倣ってメインストリーム市場のなかのターゲット・セグメントをひとつ選定し、そこを攻略することである。そして、この攻略を成功させる為に四つの戦術を採用することにした。 最初の戦術は攻略地点の決定である。これは、ターゲット…
たとえば、「この市場の大きさは?」という質問だ。ふたたび、この質問に対する率直な答えはーマーケットの大きさは、価値命題(すなわち「購入の必然性」)の重要性と、ホールプロダクトがその価値命題にどこまで応えられるかによって決まるーということに…
無名のベンダーが慎重な実利主義者に製品を売り込むときには、相手先のベンダーの営業力を利用できるという点で、OEMはきわめて有効な販売チャネルに見える。しかし、まだ世間でよく知られていない製品をOEMで組み込むような相手先を見つけられるかと言う問…
システムインテグレータは本来的に販売チャネルではないし、彼らがまったく同じシステムを二度開発することはない。システムインテグレータは、販売チャネルというよりもむしろ顧客の代理人とみるべきであり、ベンダーの経営陣がトップ営業を推進すべき相手…
小売業者もっとも得意とするのは顧客の需要を満たすことであって、決して需要を創出することではないという点を強調しておきたい。直販と違って、小売業者が商品を販売するとき、顧客にコンサルテーションを行うことはない。 『キャズム』 〜第7章 作戦の実行…
キャズムを越えるときの最適の販売チャネルは直販であることに変わりはない。そして何よりも、直販こそが、ベンダーの運命を自ら切り開いていける手段なのだ。 『キャズム』 〜第7章 作戦の実行 P.276〜